加えて政令の議論時に再び部会を開くなど、言ってみれば、市町村が自分の地域で民泊をどう位置づけるか判断できる素地を持つことができ、旅館側もその重要性を十分訴え理解の輪が広げる努力をできる余地が残りました。
その一方で、民泊を行う場合の標章掲示義務、罰金の引き上げなど、今までの無法状態は格段に改善します。
もちろん保健所など取り締まり体制の強化、私が再三指摘してきた180泊の確認のそれを超えて営業する施設への摘発の方法など課題は残り、今後ともそれは随時意見を述べていきます。
約2年にわたる議論、最初は世界的民泊サイトのプラットフォームairbnb、途中から賃貸業界と向かい合う相手が変わり、最後にはプラットフォームの登録に反対するIT系の方々と"戦う"相手が目まぐるしく次々と登場する不思議な展開でした。
特に最終盤になって、IT系の方々がプラットフォームへの規制について否定的な意見を大きく述べられたことには、違和感と戸惑いが残るばかりでした。
そもそもairbnbが再三の違法民泊助長の指摘を受けながら、一顧だにせず事業を続けたことが発端です。中国系も含め相次いで参入し、本来あるべき「一度違法状態の民泊は全てやめさせてからあるべき論を議論する」という本来当たり前のことができませんでした。結局は現在違法状態のものを、一定のルールに基づいて合法化するという転帰を辿(たど)らざる得なくなりました。
このようにモラルに疑念と不安のあるプラットフォームを登録制にして管理するのは当然であります。ことは宿泊という国民に不可欠かつ安全、治安、プライバシーに深くかかわる事柄です。
国民の安全性をなおざりにした無秩序な規制緩和が何をもたらしたか、軽井沢スキーバス事故を改めて思い返さなければなりません。
宿泊業をやめて民泊業になろうか、こんな声を少なくありません。しかし観光業界に生きてきた人間として、これからも旅館は観光のど真ん中にあるべき存在です。
業界、特に全旅連の青年部の皆さんの熱い思いは、私にとってはその期待と確信を抱かせるに十分なものでありました。その意味では希望を抱く機会も本当に多くありました。
今後も自分の与えられた役割の中で、何ができるのか沈思黙考しながら、"まっとうに頑張る人たちが報われる"観光業の振興のために努力して参ります。